【番外編 『無邪気の恐怖』】

date

2002/11/23(sat) 中潮

point
葛西(左近川親水公園)
report

 前日のシーバスボートでの悲惨な結果に、これからは餌釣り専門でいこうと心に決めた。で、早速実行である。おそらく、心に決めなくても同じことをしたと思うが。

 時計の針は4時を回り、晩秋の寒気が公園をつつむ。だが、ハゼのほうはいたって活性が高く、鈎を落とすとすぐにウキが引き込まれる。型もそこそこ良くて、すっかり楽しんでいたときのことだった。小さな男の子が寄ってきた。幼稚園に通うくらいの歳だろうか。何が釣れたのと聞くので、上がったばかりのハゼを見せてあげると、満足したのか遊具のあるところに駆けていった。

 しばらくすると、彼方から「ハゼ釣れたぁ?」と訊ねる声がした。かわいいもんだねぇ、と最初は思っていた。ところが、それから頻繁に声がかかるようになったのである。皮肉なもので、それまで食いの良かったハゼの活性が下がり始めた。そうなると、それまで無邪気に思えていた男の子が、しだいに恐ろしく思えてきた。

 「ハーゼー、つーれーたぁぁぁ?」

 また、あの声が聞こえる。

result

ハゼ 5尾

photo
なし

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