【番外編 『シルエット・ロマンバス』】

date

2007/04/30(mon) 大潮

point
新利根川
report

 毎度のkosukosuと、ボートで新利根川の葦を打ちに行こうということになった。

 これまでバス釣りで乗ったボートと言えば、山中湖なんかの手漕ぎ足漕ぎ貸しボートだった。今回は、kosukosu所有のアルミボート「Sea Nymph」である。しかもエレキ付き。てけてけてけてけてけてけてけてけ。判る人にだけわかってもらえればいい。

 さてさてさてさてさてさてさてさて、今回の狙いはブラックバスなのだが、前回行ったのは一体いつだったか。釣行録を読み返してみると、2002年9月のことだった。爾来、海で兼用している道具以外は、手も触れていない。今回、バス釣りに行くにあたって、まず散点しているルアーやらフックやらをかき集めるところから始めないといけなかった。だが、こんなときは普段狙わない魚種のタックルをてきとーに仕舞っておく悪い癖が災いする。その上、加齢と共にひどくなる物忘れが、さらに作業を困難なものにする。それでも、あっちの箱をひっかき回し、こっちのバッグの中身をひっくり返して、なんとか釣りに行ける準備が整った。

 迎えた釣行当日。明日からは皐月というこの日、朝から太陽が燦々と照りつけていた。毎回天候に悩まされるkosukosuとの釣行では、これは珍しいことである。ふむふむ幸先よろしい、などと喜んでいたのだが、この「燦々」によもや、あれほど苦しむことになるとは、出かける前は思いもよらなかったのだ。

 kosukosuのお迎えで、東関東道から成田を抜けて、今回の目的地、新利根川に着いたのは、まぶしい太陽が天頂に輝く午後一時のことだった。そこで、ボートを下ろしたのだが、重くて大変ながら、初めて体験だけにけっこう楽しかったりもする。いやぁ、いくつになっても、初体験っちゅうのはええもんですな。ひょほひょほ。

 どたばたと二人で筆を、いや船を下ろし、いざ出航。おっと、その前に日焼け止めを塗っておかねば。釣行前々日のマックスの散歩だけで、顔が赤くひりつくので、念を入れてコパトーンSPF50をたっぷりと塗った。で、これが大間違い。花粉アレルギーで炎症気味の目に、汗と一緒に流れ込むのだ。そこに容赦ない紫外線が降り注ぎ、チカチカと痛む目から、ポロポロと涙を流し続けながらの釣りになってしまった。この姿を見た人は、きっと思ったことだろう。釣れないことを嘆き悲しんでいるようだと...

 川は田植えの影響で、土色に濁っている。事前のkosukosu情報では、今回唯一の懸念がこの濁りだったのだが、みごとに当たってしまったようだ。だが気候もいいし、この程度の逆境はどってことないさ。などと、男は目に涙を浮かべながら、自分をだまし続けた。

 今回の釣りは、ベイトタックルを駆使して、葦際にルアーを投げ込んではピックアップを繰り返すのだと、kosukosuから説明を受ける。だが、ここに一つ問題があった。えへへ、ベイトってどうやって使うのかなぁ...なーんて。だって手持ちのベイトリール、ボートシーバスのジギング用にと思って、買ったままで使ったことないんだもん。ましてや、すっかり覚えの悪くなったおじさんのことである。 ルアーは思ったところに入らない。ふんわり浮き上がっては、狙いよりも手前にぽちゃんと落ちる。たまに入ったと思ったら、ラインがまわりの枝やらに引っかかっていたりする。挙句にキャストするたび、ぶわっと膨れ上がるスプールに、呪詛の言葉を吐きながら、苦心惨憺、キャストを繰り返したのだった。

 それでも、しばらく投げている間に、すっかり慣れた。キャストではなく、バックラッシュの処理にだが。そのときも、膨らんだスプールからラインを引き出し終わって、やれやれと巻き直したときだった。ばしゃばしゃ。あ、あ、あ、釣れてる!あ、あ、あ...あ、ばれた。

 ばれた。ブラシ付きのラバージグで合わせなしは、やはりだめか。でも、釣れる気にはなってきた。よーし、釣るぞー。釣れなかったけど。

 その後、釣果はないが、成果はあった。フリッピングなるものを、多少なりとも身につけたのだ...と、いう気がする。スピニングリールと違って、サミングをまじめにやるのがコツだ...と、思う。ただ、これもぽんぽんとテンポ良く投げている間はいいのだが、ちょっとボートを動かしたりして間が空くと、また初心に戻ってしまう。「四十の手習い」の哀しさが滲む。

 ところで、今回の釣行にはもう一人いたのだが、この男はどうなったか。往路では、「まあ釣れないことはないでしょう」などと大言壮語を吐いていた野郎である。まさか、釣れんなどということはなかろう。だが、バイトもない時間が延々と続き、本人は「田植えが、田植えが」と空しい言い訳を繰り返すばかり。これでボウズだったら、アルミボートの底にこっそり穴でも開けておこうと、硫酸のビンの蓋に手をかけたところだった。あれ?kosukosuがのけぞっている。そんなに笑える話をした覚えはないのだが...ああ、魚が釣れてるのか。でも、小さい。カメラを構えると、「こんな小さな魚の写真を撮るのは止めてくれ」と言うので、嬉々としてシャッターを切った。まぶしい太陽を背にした、侘しいシルエット。ナイスショット。

 なんて悪態をついてみたが、本当はボウズ続きの相方に何とか1尾釣らせてあげようと、kosukosuはがんばったのだ。特に自分が釣った後は、操船に専念し、あれこれとアドバイスをくれたのだ。だが、あえて言わせてもらうが、これだけ長いこと一緒に釣りに行っていながら、kosukosuはわかっていない。懇切丁寧なアドバイス、そして、ゆらゆら揺れる足場に、驚くほど弱い釣師がいることを。

 最後はボートを諦め、陸っぱりに切り替えてまで釣果にこだわったが、だめだった。利根川の水は、涙でしょっぱい...かもしれない。

result

kosukosu 釣ったと言えば釣った
yoich 
No-Fish

photo
シルエーット こんなに切ない魚の写真があっただろうか

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