【宝物、あるいは悪魔の化身】

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YO-ZURI

lure
L-MINNOW S 66mm 7g
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シーバス 51cm
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 生まれて初めての釣果をもたらしてくれた、とっておきの宝物です。

 僕がルアーを始めたのは1995年11月のことです。当時、キムタクや糸井重里さんがTVでルアーフィッシングを喧伝し、猫もワタシもルアーに飛びついたのです。しかし海に近いところで育った僕には、どろっとした沼で釣るブラックバスには抵抗感がありました。そこで目をつけたのがシーバスです。

 さてルアー釣りを始めるに当たって、最初の壁は「ルアーの購入」でした。身近にkosukosuというルアーフィッシングの先生がいてくれたため、竿やリールの選び方は教えてもらえたのですが、彼の専門外だったシーバスのルアー選びだけは自分で情報を集めるしかなかったのです。今でこそインターネットという「うちでの小槌」がありますが、海系の雑誌は少なく、ルアー専門の新聞もない当時、所謂ふつうの釣り新聞からコツコツと記事を拾ったりしていました。それはそれで楽しかったりしたのですが。

 結論としては「RAPALAのCD-9が良いらしい、できればGBOもしくはRH」ということになりました。しかし釣具屋に行きCD-9を目の当たりにして、これは買えないと思ってしまいました。金額ではありません、その大きさです。少年時代、砂浜からの投げ釣りしかしたのことのなかった僕にとって、9cmのルアーはとても魚の口に入るものには思えなかったのです。そこで気持ち的に折り合いのつく、ぎりぎりのところで選んだのが、このヨーヅリの金黒でした。たしか1,000円しない金額で購入したように思います。

 ヨーヅリは、かの開高健先生の本にも出てきたメーカーなのですが、今ではデュエルに吸収されてしまい、ブランド名として残っているだけです(確か)。個人的にはyoichの「yo」とも通ずるところもあってお気に入りだっただけに、とても残念な気がします。ヨーヅリには「デルタソード」(次の釣果はこれで得ました)や「トビマルJr」(kosukosuはこれで大当たり)、「マグミノー」(これはまだ現役?)など、アクション、カラーリング共に実用的なミノーがそろっていました。その中にあってLミノーは、おそらく安価な普及品としてラインナップされていたのではないかと思います。そのため定番になりえずに、いつの間にか店頭から姿を消していました。しばらくして同じ型のものが逆輸入品として販売されていましたが、金黒がなく、私的幻のルアーになってしまいました。

 このルアーは写真の通り、ずんぐりむっくりのハンプバック型で、66mmという長さの割りには質量感があります。水の中で、ぶりぶりと身をくねらせながら泳ぐ姿は、コケティッシュなトランジスタグラマーとでも表せましょうか。金色のボディには、背には黒、腹にはオレンジが吹きつけられ、さらに体側に地獄の業火のような黒い縞模様が描かれているところも、どことなく蠱惑的です。

 実のところこのルアーで釣果を得たのは初回の51cmだけです。しかし、その後、ルアーフィッシングの奈落に落ちるきっかけを作った、まさに悪魔の化身だったのです。

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